太平洋戦争中のカレーライスのレシピを再現してみました。

東京大学 農学部図書館の本棚を眺めていたら、太平洋戦争中の共同炊事の記録を見つけました。

昭和17年は1942年なので、太平洋戦争の初期の頃の記録です。

 

 

 

戦時中の炊事の方法や実際の炊事で使った分量などの記録が並ぶ中で

 

私は見つけてしまいました。

 

「カレーライス」の文字を。

 

次のページをめくると、分量が書いてあります。

分量(1人分)

・米 250g
・じゃがいも 100g
・玉ねぎ 50g
・にんじん 5g
・豚肉 25g
・キャベツ 100g
・小麦粉 25g
・カレー粉 1g
・塩
・砂糖
・油 2.4g

 

 

塩や水の記載がなかったので、さらに資料をめくっていると

「ライスカレーの(塩分の)味付け」というページが出てきました。

 

4%がちょうど良いそうです。

具材量が
じゃがいも 100g + 玉ねぎ 50g + にんじん 5g + 豚肉 25g +キャベツ 100g = 280g

水の量は記載の 150ml とすると

(280+150)× 4% = 17.2g

 

 

…17.2g!!!

 

通常のカレールーの食塩量が約2gなので約8.5倍です…!!!!!!

 

さらにさらに読み進めると

 

”塩だけだと味がきつくなるので、醤油を加える” と書いてあり

”醤油を加えた分の塩分量は塩から差し引く” という記載がありました。

 

180人分で5合(900ml)を加えているので、1人分で5ml。醤油の塩分濃度が20%とすると

5 × 20% = 1g

 

つまり醤油を5ml加えて、塩は 17.2g – 1g = 16.2g ということになります。

 

しかし、これだと塩辛すぎて食べられなくなってしまうと思うので

ほかの分量は忠実に再現しつつ

 

塩は4分の1程度の4.5gから作ってみます

 

戦時中のカレーライス

塩の量以外は資料に記載の量で作ってみました。ひとりぶんですが、かなり多いです。作り方は書いていなかったので、大人数量(記載だと180人分)を作る&昔の炊事という前提から煮込みがメインだと想定して作っています。
分量 1 人分
調理時間 20 minutes
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材料
  

  • 250 g
  • 100 g じゃがいも
  • 100 g キャベツ
  • 50 g たまねぎ
  • 25 g 豚肉
  • 5 g にんじん
  • 1 g カレー粉
  • 25 g 小麦粉
  • 2.4 g
  • 150 ml
  • 5 ml 醤油
  • 4.5 g 原文だと16.2g。4.5gでも十分なのでお好みで最後に調整してください。小さじ1弱です

作り方
 

  • カレー粉と小麦粉を弱火で軽く炒ります。この工程は油で練ることもあるのですが、今回は油の記載量が少なかったので、炒る方法で作ってみます
  • ほんのり色づいて香ばしい香りが立ってきたら火からおろして冷まします
  • 油をひいて豚肉を軽く炒めます
  • 水と野菜、塩4.5gを加えて沸騰したら、ふたをして15分ほど煮込みます。(大人数調理だと水の蒸発量が少ないので、1人分にしたときはできるだけ蒸発しないようにしっかりふたをして弱火で煮込み、野菜から水分を引き出します。)
  • ふたを開けて火を止めてから、醤油と2を加えます
  • 混ぜ合わせて、超もったりして汁気はない状態になったら完成です

 

炊いたごはんを250g盛り付けました。(わりと多い)

 

・・・あれ?

 

 

資料をよくよく見ると・・・

 

米の欄の熱量(カロリー)の行に825と書いてあります・・・(汗)

 

こ、これは・・・

 

生米250gのカロリーですね…!!!!!

 

すなわち炊いたら二倍の約500g、1.4合分…!

 

↑下から三行目が熱量の記載になります。

昔の人は良くご飯を食べていたと聞きますが、すごい量です。

塩分量がすさまじく多かった理由もわかる気がしてきました。

 

 

今回は250gでご勘弁していただくとして、

 

出来上がった1人分カレーを盛り付けてみました。

 

 

これもすごい量です。

じゃがいもが多いのと小麦粉がしっかり入っているので糖質満点。

 

早速、いただきます。

 

 

味は…

 

…おっ…おいしい…!!!

 

塩としょうゆの素朴な味わいの中に、ほんのり香る香辛料が食欲をそそります。

 

塩だけで味をつけ、コンソメや出汁などを入れないのが野菜の甘みを一層引き立てているように思います。

特にキャベツのうまみがたまりません。

塩分量は十分で、ごはんがすすむしょっぱさです。

 

 

 

我々が良く知っているような「カレー」として食べるとカレー感はないかもしれませんが、

優しい味わいで、異国の肉じゃがといった感じです。

 

粉が多いのでもっさりとした仕上がりですが、これもまた新しい触感と味わいでおいしいです。

 

 

なんといっても脂っこくなく、脂質が低いのが良いです。

消化に良い&糖質が高い素材がメインなのでトレーニング前にも最高ですね。

 

 

朝からでも食べたいカレーという感じです。

 

 

 

今回の味覚的な学びは

・少しのカレー粉でも塩と(少しの醤油)だけで美味しくできる

・肉が少なくても野菜を煮込んで美味しいカレーができる

・キャベツを入れると甘みが出て美味しい

の3点でした。

 

 

皆さんがこのレシピで作るときは、塩以外はできるだけ忠実に作ってみると新たな発見があるかと思います。

(特に肉の量・カレー粉の量を増やしたくなってしまったり、小麦粉の量を減らしてみたくなってしまったり思うかもしれませんが)

 

 

参考までに原文そのままでつくると

1人分のカレーライスは

●カロリー 1197 kcal
●糖質 234g (≒ 角砂糖58個)
●食塩相当量 17.2g(≒ 味噌汁15杯)

になります。

※カレールーのみだと387kcal

 

 

2人分くらいあるので、

一度試食してみて、そのあとに我々が良く知っているようなカレーに近づけたかったら

水を足してのばし、カレー粉と塩を足してみると良いと思います。

 

 

 

戦時中、このカレーが出てきたら、本当にたまらなく美味しく感じられたでしょう。

 

正直言うと、素朴な味わいが私の好みでもあり

 

「もう一度食べたい!」と思えるカレーでした。

 

 

 

次は約80年の歴史を超えたアレンジを加えて

 

また、作ってみます。

「太平洋戦争中のカレーライスのレシピを再現してみました。」への8件のフィードバック

  1. インスタから飛んで来ました。カリー子師匠の知的好奇心、カレー好奇心に感動しとります。これまでもこれからも。カレー愛、姉愛大切に。ご活躍、楽しみにしております。

    1. ご丁寧にありがとうございます
      頑張ります

  2. 東亞重工 より: 返信

    大戦中の兵隊さんむけなので、塩分量とお米の量がすごいんでしょうねえ。
    昭和30年代ごろの食卓の画像でも、少しのおかずで膨大な量のご飯を食べているのがわかりました。

    1. 米こそ力の源だったのでしょうね

  3. 坂本仰次 より: 返信

    うちの祖母は肉の代替で油揚げを使ってたことを思い出しました。

    1. 油揚げもお肉並みに美味しいですよね〜

  4. 通りすがり より: 返信

    大変興味深く読ませていただきました。昔のカレーはこんなだったのですね。貴重な資料を紹介していただき、ありがとうございました。

    1. 面白いですよね
      コメントありがとうございます。

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